旧和歌山水力電気(第2発電所)高津尾発電所 (日高川町)

 

旧和歌山水力電気(第二発電所)関西電力 高津尾発電所

 

T1この建物は、日高川町高津尾(旧中津村)にある「関西電力 高津尾発電所」をご紹介します。

完成年: 運転開始 大正7年(1918) 
起工 大正4年(1915

設計・施工者 :西本組T2

構造 煉瓦造、桁行23.490m、梁間 20.39m、地下2階、地上2階、一部中2階を備える。

(参考:和歌山県 近代化遺産)

 正門を入って急な坂道を下ると、目の前に赤レンガのどっしりとした建物の姿が目に飛び込んできました。外壁は煉瓦の長手だけの段と小口だけの段を一段置に積むイギリス積みで構成されていて、その壁面に帯状の白い擬石にて装飾が施されており梁状の凸部下部は3段の段状に持ちだしを造り、柱やアーチ状の凹凸で煉瓦造の壁面に豊かな表情を持たせています。開口部の上部はアーチ状に丸く、下部の窓台はコンクリートの白い擬石で造られています。構内に入って正面(北側)のパラペットには関西電力の社章が掲げられ、反対の南側は、和歌山水力の社章が掲げられておりパラペットtakatuo4下部には小さな庇状の持ちだし(コーニス)など発電所で有りながらそのまま商業建築に転用できそうな風情を感じさせる 建物です。

現在西側2階に事務所があり、当時3台の発電機が設置されていた東側は資材置き場として利用されています。ここは上まで吹抜けの平屋になっていて小屋は鉄骨のフラットトラスで構成されています。内部壁面は白く塗られているもののアーチ状の 窓から入る日差しに高い壁に凹凸の陰影が浮かび、独特の雰囲気のある空間です。

地下1階はアーチ状になっていて発電機があった当時の姿は想像できませんが、大正初めの時代にすごいものが建設されていたのだと感じました。

外に出て道を挟んだ小高い丘の上にある調整池を見学に行きました。真っ青な水をたたえ緑豊かな環境に池があり、そこから見る発電所は日高川と山を背景に見事に溶け込み長い年月を経て地域と一体化していると感じました。このT7辺一帯は春には桜が咲き花見客が訪れるとのことで、近くには温泉の「あやめの湯」や「中津ドーム」、キャンプ場等もあり、現在では、観光スポットになっているそうです。

筆者は、この近くに祖父母が住んでいたこともあり小学校低学年のころ、高津尾発電所を見に来たことが有ります。その頃は、まだこの発電所が稼働しており、調整池から発電所に向かって太いパイプ(3本程並んでいたように記憶があります)が有りましたが、今でT8は隣接する新しい発電所に変わったためそのパイプも撤去され、少しさびしく感じました。当時は今と違って御坊からこの中津村までの道は狭く、建設資材等の運搬もままならぬ状態だったことが容易に想像できますが、そうした山奥にデザインを施した発電所の建設にかかわった人々の情熱と誇りに対し、同じく建築にかかわっているひとりとして尊敬の念を抱き帰路につきました。

 【会報誌きのくにH23年3月号掲載】

情報・出版委員 大前 高志

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