有田市立箕島中学校 武道場(旧和歌山県立箕島商業学校武徳殿)

有田市立箕島中学校 武道場(旧和歌山県立箕島商業学校武徳殿)

 

所在地:和歌山県有田市箕島 完成年:昭和13年(1938)B1
設計・施工:不明      構造等:鉄筋コンクリート造
(和歌山県近代化遺産 参考)

 昭和13年に旧和歌山県立箕島商業学校の武徳殿として、鉄筋コンクリート造で建設されました。鉄筋コンクリート造による武徳殿としては和歌山県下唯一のものであり、全国的に見ても、現存事例では、昭和14年に竣工した滋賀県の武徳殿(滋賀県体育文化館)があり、学校施設として建設された武徳殿のなかで、鉄筋コンクリート造でつくられたものとしては珍しいものとなります。

B2 B3 この武徳殿は、当初、昭和8年に木造で建設されましたが、昭和9年の室戸台風で倒壊したため、復興事業で耐風性能の高い鉄筋コンクリートで再建されました。現在、運動場北側に鉄筋コンクリート造ながら木造建築的な意匠で威風堂々と建っており、柱型・梁型・化粧垂木を外壁面に出し、反りを持たした切妻屋根は銅版にて葺かれています。正面には千鳥破風を乗せ、妻側破風には懸魚による装飾が施されています。

B5B4 柱・梁等を外壁面から出すことで単調になりがちな壁面に変化をもたし、正面の車寄せは片流れの屋根をエンタシス型状の柱2本で支えています。この柱の柱頭部には持ち送りが見られ、柱側面には水平に三本の目地が設けられています。また軒天井は格天井風の装飾が施され、両側の外壁面には丸窓が設置され、正面玄関に威厳を持たせています。
内部に入ると、折上げ格天井のある広大な室内が目に飛び込んできます。天井の最高高さは5,550mmあり、その内折上げの曲面格天井断面高さが510mmになっています。北側壁面には両側に円柱を配した玉座がありますが、現在は木造の間仕切りで区切り部室に使用していました。ただし、このbutoku壁はいつでも取り外せるよう釘を一切使わず組み立てられているとのことです。校長先生のお話によると、夏は涼しく扇風機2台があれば快適に過ごすことができ、冬は床が高いからか冷え込まないすばらしい武徳殿だとのことでした。

当時は使用できないほど痛んでいた武徳殿を、昭和54年に大規模改造を行い、木造の屋根軸組みから鉄骨造に、瓦屋根を銅版葺に変更し、内装・外装についても改修されました。また、平成2年、平成8年にいずれも雨漏り屋根の一部を改修、平成15年には屋根を全面的に葺き直し外壁も塗装し現在に至っています。

 こうした文化財を我々はもちろん一般の人々も大切にいつまでも残したいと考えていますが、その為には関係者の皆様のただならぬご努力があってこそと改めて感じることができました。

【会報誌きのくにH23年4月号掲載】

情報・出版委員 大前高志

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