国際鯨類施設

国際鯨類施設

(東牟婁郡太地町大字太地1770-1)

設計 建築・設備 阪根宏彦計画設計事務所

構造 村田龍馬設計所

施工 (株)淺川組

敷地面積 23,844.73㎡

建築面積 2,258.32㎡

延床面積 1,879.92㎡

階数 地上2階

構造 鉄骨造 一部、木造

工期 2022年3月~2023年10月

開館 2024年4月

 

この建物は太地町南部の海を見下ろす高台に町の文化施設としてだけではなく国内初の鯨類に特化した複合施設として観光とくじらの学術研究都市を目指す太地町の防災拠点、文化施設として建設された。設計はプロポーザル方式で行われ、なんと79社もの応募があったそうだ。東西88m敷地の高低差3mを活かした計画である、南側に大きく張り出したCLTパネル製(幅2,260㎜、長さ6,700㎜~9,500㎜、厚さ150㎜、重さ約1トン)の庇を上部鉄骨や2,200㎜ピッチで配置された径140㎜高さ6mの丸鉄柱とアーチ状の全面ガラス壁が支えていて外部ポーチと内部ローカは緩やかなスロープとなっている。南側中央玄関から入ると広大なエントランスホール天井はCLTパネル表しで使用され水平構面も兼ねることで前面ガラス壁の無ブレースを実現、天井CLTパネル、床、装飾壁は全て紀州材が使用されている。

エントランスホール右側が一般でも利用できる会議室、鯨類に関する蔵書3万冊以上の図書室(鯨類だけでなくカツオや釣り、漁に関する本も多数)収容人数90名の研修室は階段状で東側壁は高さ7.5mの全面ガラス壁で緑豊かな前庭の向こうに雄大な太平洋が望める、高低差を上手く活用している。エントランスホール左側は1m高くなっており一般財団法人日本鯨類研究所太地事務所の事務室、研究室、化学分析室、生物解析室、標本保管室などがあり鯨類その他の海産哺乳類に関する試験研究及び調査で国際的な水産資源の適切な管理と利用に寄与することを目的とした事業を行っている。以前この施設は宮城県石巻市で実験場として活動していたが先の震災で被災、流失、閉鎖となったが縁あって太地町に移転された。対岸にある町立くじらの博物館は昭和44年に開館されている。約400年もの昔から命がけの古式捕鯨から南氷洋漁と太地町の経済と戦後の国民の胃袋を支えてきた鯨だが今後は鯨を観光、集客の軸としたまちづくりをと約60年も前から構想していた先人指導者らには恐れ入る。この建物を実際見た瞬間「おお~」と皆驚くだろう、写真ではわからないこのボリューム感にこの小さな町の1施設が日本だけでなく世界を意識しているのは間違いない。私らが小学生のころ給食で大人気だった「鯨の竜田揚げ」が手前の「道の駅たいじ」では普通に食せる、ここのトイレも綺麗ですばらしい。和歌山市から車で約3時間と日帰りではちょっともったいないが、わざわざ出かける価値は十分にある。南紀州の人たちはとても熱く親切だった。

【会報誌きのくにR7年8月号掲載】

情報・出版委員 永田佳久

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