和歌山ビッグホエール
和歌山ビッグホエール
■竣工年 平成9年(1997年)
■設計 日建設計
■施工 竹中工務店,西松建設,前田建設工業 JV
■構 造 鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造 地下1階、地上3階
■延床面積 17,273㎡
和歌山市手平にある多目的ホール「和歌山ビッグホエール」を紹介します。同敷地内の県民交流プラザ「和歌山ビッグ愛」と共に国体道路沿いのランドマークであり、“クジラ”がシンボルの建物です。東側には2012年に建築された武道・体育センター「ビッグウェーブ」が隣接します。
元々は旧国鉄の貨物専用駅と操車場があり、国体道路とJR紀勢線の間に位置し県内の国鉄跡地としては最大の面積を有するこの敷地を県が購入、県民の「保健・福祉の充実」「健康の増進」「スポーツの振興」を総合的に推進するため策定された「健康ふれ愛和歌山計画」の一環として建設されました。現在はビッグ愛、ビッグウェーブと共に公益財団法人 和歌山県スポーツ振興財団によって管理運営がなされています。
この施設の特徴は何と言っても建物の名の通り、黒潮に泳ぐ「クジラ」を表現した外観です。クジラが潮を吹くように上空に水を噴出する機能まで備えられています。“わかやまらしさ”は内部にも表れ「木(紀)の国」にちなんでアリーナ天井には杉板・壁面には杉丸太・座席にはヒノキという風に紀州材がふんだんに使用されています。アリーナ面積3,280㎡、最大収容8,500席といっても規模がわかりにくいのですが、県民文化会館大ホールの2,000席と比較するとビッグホエールの“ビッグ”さが理解しやすいと思います。そして県内の他の文化施設・スポーツ施設との違いは規模だけでなく、多目的利用に対応している点です。あらゆるレイアウトパターンが可能な可動席収納や、様々な照明や演出プランに対応した空間設営ができる走行式移動吊物機構を設けることで、テニス・バスケットボール・バレーボールなどのスポーツからコンサート・演劇・展示会‥と幅広く利用されています。エントランスホールに展示されているスポーツ選手やアーティストのサインからもその多用途ぶりが伺えます。今年、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)では総合開会式と剣道、紀の国わかやま国体ではバスケットボール・ハンドボール・体操、全国障害者スポーツ大会では卓球の競技が行われる予定です。築18年が経過した建物ですが建築当時最新の設備は現在も活用され、アルミハニカムパネルの外壁やコンクリート打放し仕上げの内外装の状態がとても良く年数を感じさせません。外壁に沿って傾きのあるガラス張りの2階ギャラリーの周遊散歩、エントランス前の広場での体操、敷地内でジョギングされている県民の方の姿を見かけますが、健康増進、文化振興、と多目的にこれからも大きく利用していきたい公共施設です。
【会報誌きのくにH27年2月号掲載】
情報・出版委員 三木早也佳