田辺市文化交流センターたなべる

田辺市文化交流センター たなべる

建物概要

設計監理  株式会社アール・アイ・エー

構  造  S造2階建て

建築面積  2952.95㎡

延床面積  3337.56㎡

敷地面積  8577.65㎡

着  工  平成22年7月

竣  工  平成23年11月

休館日   毎週月曜日、第4木曜日、年末年始

 田辺市文化交流センター たなべる を紹介したいと思います。田辺市の市街地に長年あった公立病院の郊外移転にともない、跡地利用を市民等多くの意見を踏まえ図書館、歴史民俗資料館及び市民広場を併せ持つ複合文化施設として建設されました。色々な利用案があったそうですが周辺は住宅密集地ながら近隣に小中高校、医院が多く、通院、通学路としての人々の往来が多くまさに街のオアシスと呼ぶのにふさわしい施設だと思います。以前の増築を繰り返し、敷地を目いっぱい使いきった旧施設の圧迫感を知る者にとって、このゆったりとした空間、たたずまいは別世界のようです。外観は最近よく耳にするプロフィリットガラスが南北西面を覆い、日射と採光を調和させ、低く設けられたアルミ型材の庇と下部はFIXガラスで、植栽と小山によって大通りからの視線と喧騒との遮断を図っています。この近代的な建材が白壁や瓦といった和を連想させるのが不思議なところです。

東側にはたっぷりの駐車場が設けられ、メインエントランスには大きな雨除けのある車寄せがあり雨天の利用が多いと思われるこの施設に考慮されています。吹抜けのエントランスホールに入ると右手に2階民俗資料館への階段、正面に進むと右側にサービスカウンター、左側は子供向けコーナーがあり乳幼児を連れた利用にも配慮されています。正面には広々とした閲覧スペースと開架書庫が整然と並び外周部にも閲覧スペースが配置され外庭を眺めながら読書ができます。上部のプロフィリットガラスを介したやさしい光と低く長い庇による閉鎖感がとてもここちよく、落ち着かせてくれます。また、消防設備や換気、照明、ドア、手すりなどは目立たぬよう、建物と一体となるようデザインに工夫がなされています。内装も天井には紀州材、コンクリート型枠にも紀州材を用いるなど近代建材とのバランスにも配慮されています。2階には大会議室と民俗資料館があり古墳時代からの出土品などが展示され田辺、熊野地域の成り立ちや歴史、偉人が紹介され学べる施設となっています。

両施設ともこの地域の文化、教育になくてはならないものとして市民、学生たちに愛されつづけることでしょう。

最後に今回の取材にあたり設計者であるRIAの菊池さんがはるばる大阪からおいで下さり、休日にも関わらず田辺市の当時の建築担当者である田上さんとともに、コンペから実施設計、工事中の貴重な体験を施設内くまなく案内していただきながらお話しいただきましたことにお礼申し上げますとともに、うまくみなさんにお伝えできたかわかりませんが、是非、できれば雨の日に「やすらぎ」を体験しに来てみてください。

【会報誌きのくにH27年6月号掲載】

情報・出版委員 永田佳久

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