和歌山電鐵貴志川線 伊太祈曽駅 車庫

伊太祈曽駅 車庫

DSCF0626今回は和歌山電鐵貴志川線の伊太祈曽駅へ取材に。白い下見板貼りの可愛らしい伊太祈曽駅舎をくぐって右手へ進むと目的の建物がありました。それは車両基地の車庫。外見は一見鉄骨工場のような背の高い建物で、取材時も車両の整備が行われています。近づき中へ入ると圧巻の建物です。この階高にして木造。軒まで推定6mはあるのではないでしょうか。奥に長いこの建物は規則正しく柱が並び、上部の木造トラスに続きます。屋根には天窓がもうけられ自然光が降り注ぎ、年月を経て色濃くなった木材とのコントラストが美しく感じられます。この天窓は作業の光量確保に必要だったものであろうと考えられ、そのおかげで内部の照明は非常に少なくてすんでいるようです。また柱から梁へのびる方杖と木造トラスが天窓から差し込む光をかいくぐるように整然と並び、空間を陰影の濃いものとして美しく見せています。

貴志川線は大正5年に山東軽便鉄道㈱として開業、昭和36年南海電気鉄道㈱と合併し南海電鉄貴志川線と改DSCF0652称、平成16~17年に南海電鉄より和歌山電鐵㈱に事業が継承され現在に至ります。この車庫は山東軽便鉄道開業と時を同じくして大正5年に竣工しました。まさにこの路線の最初から現役で使い続けられています。それ以来昭和南海地震や阪神大震災にも耐え、数々の大型台風にも耐え、取り巻く社会環境の変化をも超えてきました。室戸台風の時にはありとあらゆる場所に補強ブレースを施したり、最近は白アリに食われた部分を補修した、というエピソードもお聞きしました。このようなスケールの大きい空間が木造で、しかも大正時代に建っているのも驚きですが、今なお現役の建物として使われているのが本当に素晴らしいと感じました。

さてその後は貴志川線に乗りこみます。車窓からは里山の風景に癒され、すれ違う車両はおなじみ「おもちゃ電車」「いちご電車」「きいちゃん電車」など楽しげな電車の数々。そして貴志駅に到着。皆さんご存知DSCF0635のタマ駅長はお昼寝中でした。駅員さんに話を伺うとタマは元の貴志駅の売店に住んでいた母猫から生まれた生粋の貴志駅の住人との事です。貴志駅は平成22年に現在の桧皮ぶき駅舎(ネコ顔)に生まれ変わり、多くの人々に親しまれています。大正5年は西暦1916年。貴志川線と伊太祈曽駅車庫はあと3年で満100歳です。

 【会報誌きのくにH25年10月号掲載】

 

情報・出版委員 南方一晃

このページの上部へ