広川町立広小学校

広川町立広小学校

 

【建物概要】

■敷地面積:9,922.21㎡

建築面積:2,930.31㎡(新校舎部分)

延床面積:3,358.32㎡(新校舎部分)

■構造・規模

鉄筋コンクリート造+木造(一部鉄骨造) 2階建て

■設計・監理:川建築事務所・hana class設計共同企業体

■施工:中平建設株式会社(新校舎工事)

 

今回は広川町立広小学校を紹介します。既存校舎老朽化に伴う建て替え工事です。全校生徒約100名が学ぶ校舎です。広川町といえば、安政大地震津波の際に大津波から住民を守った濱口悟陵さんの「稲村の火」の伝承で有名な町です。濱口悟陵さんの教えを受け継ぎ、新しい校舎は津波に備えたつくりとなっています。正門を入って見えてくる2階建て校舎の1階は、鉄筋コンクリート造のピロティとなっています。教室などの小学校の用途のほとんどが、津波の想定浸水高さ以上の2階に配置されており、1階はほぼ柱だけの空間となっています。ピロティ内の倉庫やEVの壁は、水を受け流すように大きなR面をとっています。またピロティ内にはプールが設置されています。近年夏場は猛暑が続きますが、日中でも日陰となるため、日焼けや熱中症を気にせずプールの授業ができるとのことでした。建物西側の外壁面には、1階から2階へと続く避難用のスロープが設置されています。津波発生時には地域の人たちがスロープを使って2階まで避難することができます。屋根のある大きな屋外階段を上って教室のある2階に向かいます。昇降口に入ると中央に木造の柱があり、壁面はきれいな桧板で仕上げられています。2階の構造は、鉄筋コンクリート造と木造となっています。コンクリート打ち放し仕上げと木のコントラストがきれいです。

使用されている木材はすべて紀州材です。奥に進むと広々とした図書室とワークスペースとなっています。木造の柱・梁などが現しの仕上げとなっていて、とても温かみのある空間となっています。壁面いっぱいの本棚には多くの本が並べられていて、本棚の一部は生徒たちが座って本を読むことができるベンチになっています。床をほり込んでつくられた読書スペースでは、生徒たちが座ったり寝転んだりして読書をしていました。図書室・ワークスペースから普通教室に入っていきます。普通教室は1学年1クラスで、教室の黒板はホワイトボードで、プロジェクターが設置された電子黒板となっています。教室を出ると広々としたデッキスペースとなっています。

デッキスペースは建物外周を回遊できるように配置されています。建物西側には多目的に利用可能なギャラリーや、理科室などの特別教室、避難スペースが配置されています。建物全体的に大きな開口部が設置されていて、周辺地域まで見渡すことの明るく風通しの良い校舎となっています。校舎内から地域を見ることができると共に、地域からも子ども達の姿を日々見ることができる、地域と強い絆を育むことができる小学校校舎であると思いました。

会報誌きのくにR7年11月号掲載】

情報・出版委員 佐原光治

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