田辺市市街地活性化施設 tanabe en+(タナベ エンプラス)

田辺市市街地活性化施設 tanabe en+(タナベ エンプラス)

 

s-1_AA7233建物概要

建 築 主  田辺市

設計・監理  株式会社 バウ建築企画設計事務所

構造規模  木造+鉄骨造の混合構造 地上2階建て

建築面積  253.81㎡

延床面積  307.46㎡(1階:167.83㎡、2階:139.63㎡)

施    工   建築工事      株式会社 山幸

電気設備工事  有限会社 福原電工

機械設備工事  株式会社 紀の国設備

 

2020年8月にオープンした「田辺市市街地活性化施設」をご紹介します。

施設の愛称はtanabe en+(タナベ エンプラス)と言い、通称はen+(エンプラス)です。

この施設は、田辺駅周辺市街地の拠点として商店街の活性化や観光客の立ち寄り場、市街地の情報発信、起業やビジネスマッチングの支援など、来訪者と市民に多様な交流機会が生まれることで地域経済の活性化に繋げることを目的としオープンしました。

構想段階では田辺商工会議所と都市計画や建築、設計などのまちづくりに関わる専門家が連携し、また地元商店街や南紀みらい㈱、地域の人達も交えた会議を重ね基本計画が作成され、田辺市と協議を行い建設が実現しました。

コンセプトは、「人」「文化」「経済」を結ぶ縁空間。人と文化が繋がって生まれる物語に経済的な視点を繋げることで施設の運営を持続可能なものにしていくことを目指した施設です。

建物の外観は片流れの大きな屋根に軒の深い下屋が付いた形で板張り壁の仕上げとなっています。国交省の景観まちづくり刷新モデル地区の指定を受けた、田辺市景観まちづくり刷新支援事業(紀伊田辺駅から闘鶏神社周辺の景観整備)で新しくなった駅舎や駅前商店街の庇などの雰囲気とも合うような色や素材で仕上げており地元紀州材も積極的に使用されています。

建物のゾーニングとしては、下屋部分には奥行きの深い軒下空間(マルシェスペース)が形成されており外部と内部を緩やかに繋ぐ縁側のような役割を果たしています。マルシェスペースと隣接する1階部分(屋内)は直営のプロモーションカフェとショップになっており、ここでは地域産品なども販売されています。

2階には起業や経営に関するセミナーの開催やテレワークのできるワークスペース(最大で40人が利用可能)があり、その他に会議室やen+を運営している南紀みらい㈱の事務局があります。

取材当日は小雨が降っていましたが、屋外の軒下テーブル席でカフェを楽しむ若者達やワークスペースの利用者などで緩やかに賑わっていました。

本施設の指定管理者である南紀みらい㈱は、市からの委託業務において準備段階から施設オープン後どれだけ施設を稼働させるかに重点を置き、事業の開始に先立ち他のまちづくり先進地域の取り組みを視察・参考にして、田辺商工会議所などとも連携し次のような事業に取り組んだそうです。①シンポジウムを開催し市民による活用案の発表。②当初建っていた角地ビルを解体し空き地となったタイミングでマルシェなどのイベント開催。③稼働後を想定し周辺の空き店舗を活用した試運転。④各講座の実施や愛称の募集、愛称のロゴを考えるイベント開催。⑤屋台プロジェクトなど様々な実験事業の開催。

そのような準備を経てオープンしたen+の2020年度の稼働状況は、2階ワークスペースの実績はオープンしてからの8ケ月間(2020年8月から2021年3月まで)で106件の利用。1階のマルシェスペースでは月に1回程度マルシェを開催し、カフェもSNSの拡散効果で若い人達が集まる場所となっています。

今回取材でお話をうかがった南紀みらい㈱の担当者さんから「自ら仕掛けないと売上は伸びないし、仕掛ければ売上は伸びる。と言うことを経験から実感した。」という言葉を聞き印象に残っています。

建物の計画段階から都市計画や建築の専門家だけでなく地域の様々な人(利用者となる人)が参加して、どのように運営していくか、どう使っていくかについて考えるというプロセスが興味深く、地域の人が積極的に利用できる公共建築について考えるきっかけとなりました。

【会報誌きのくにR3年8月号掲載】

情報・出版委員 中島大介

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