海南nobinos

海南nobinos

■設計監理 株式会社 東畑建築事務所

■施工 株式会社 淺川組

■構造 鉄骨鉄筋コンクリート造+一部鉄骨造/4階建て

■敷地面積 9868.72㎡ ■建築面積 3579.46㎡ ■延床面積 7850.23㎡

■2020年6月 開館    ■最大蔵書数 約15万冊

 今回は和歌山県海南市にある『海南nobinos』です。
旧海南市庁舎、海南市児童図書館跡に建設された海南nobinosは、中心市街地のにぎわい創出をコンセプトに、図書館機能・市民活動生涯学習活動支援機能・子育て支援機能・カフェ・広場などを有する、市民交流施設です。海南nobinosは現在、開館時刻前から行列ができる公共施設になり、来館者数は平均約1,900人/日、6月の完成以来の来館者数は25万人を超え、年間においては50万人を超える予想です。敷地南側には高低差を利用した芝生広場があり、広場の間には2階の図書館エントランスへつづく通路、そして演奏会などの野外イベントができるノビノスルーフや、アリの巣をモチーフにした大きな滑り台などの遊具があり、建物1階は駐車場、駐輪場と、市民からの要望で作られた音楽練習室があります。2階には市民が利用しやすい254席のノビノスホール、多目的室、スターバックス(飲食コーナー)、ラウンジ等が設けられ、ここから“えほん”をメインにした図書館エリアが始まります。ラウンジや飲食コーナーがあることで、話声や食器を使う音などが自然に生まれ、利用者も会話をしたり、子供たちが自由に楽しめるエリアとなっています。2階から3階に通じる階段は海南の産業や自然にまつわる伝統色を使い、カラフルでありつつ海南市の伝統と色を学ぶ事もできるという要素も兼ね備えており、伝統色サインをはじめ館内のサインはグラフィックデザイナー廣村正彰氏が手掛けています。
    3階のこどもライブラリーは児童書のフロアで、押入のようなブース席や床に寝そべってゴロゴロしながら子ども達が本を楽しむことのできる、読書の森などがあります。

    4階は大人向けの落ち着いたメインライブラリーで、森の音や川の音がBGMとして流れ、ゆったりと本を手にくつろぐことができます。また、学習席やパソコン、デジカメの貸し出し、さらに大判プリントが行えるITラボがあり、多くの学生が利用しています。

    また海南nobinosは、にぎわいを創出する機能だけではなく、今後起こりうる南海トラフ地震の津波緊急避難ビルでもあります。1階は津波が押し寄せる事を考慮し、津波の力を逃がすようにピロティー式の駐車場とし、2階以上に図書館をはじめとする機能を配置しています。

写真:Nacasa&Partners Inc

 この土地にかつてあった、海南市児童図書館は地域の子供に愛された図書館でした。ここに根付くその意思を受け継いで、子供たちに愛される図書館がまた出来たと思います。

 海南nobinosの絵本ライブラリーは日本一の開架冊数があり、約5万冊ものえほんが手に取れます。それらの絵本は家具デザイナー藤森泰司氏がデザインした柔らかい本棚に並べられ、絵本を眺めながら歩くだけでも楽しい空間になっています。

 地域に寄り添い子どもから大人まで幅広い年齢の方が学べて楽しめる施設海南nobinosへ足をはこんでみてはいかがでしょう。

写真:Nacasa&Partners Inc

【会報誌きのくにR2年11月号掲載】

情報・出版委員 岩西 智宏

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