海南市立みらい子ども園

海南市立みらい子ども園

 

■竣工 平成29年12月

■構造・規模 鉄筋コンクリート構造(一部鉄骨造)、地上3階

■建築面積 1823㎡

■設計:株式会社 日総建一級建築士事務所

■施工:株式会社 淺川組

 

きのくに公共建築、今回は海南市にあります認定こども園・海南市立みらい子ども園へ行って参りました。2年前に竣工したばかりの園舎は明るく、美しく、取材当日も子ども達の元気な声が響き渡っていました。現在園児は251名、職員さん50名。元は市民病院のあった場所に日方保育所・室山保育所・日方幼稚園・黒江幼稚園が合併して誕生しました。

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園庭を囲うようにL型に南と東に向かって開かれた園舎は明るく開放的です。この園庭を望むように建物のフォルムと同じように配置された廊下も同様に明るくて実に開放的です。廊下幅が広いため教室の延長線上として使うこともできたり、お迎えに来た親御さんとのコミュニケーションの場となったりと有効的に機能しています。また、2階部分の廊下では子供の目線で園庭が望めるように床近くまでサッシが施され、ガラスを通して外の様子を垣間見ることができます。教室と廊下を隔てる建具にも工夫があります。3枚引き分け戸になった建具の廊下側は格子のみの建具となり、子どもが廊下に飛び出すことを防止しつつ、通風を確保できる画期的なアイディアです。また、子ども達の荷物の収納にも画期的な発想が込められています。0歳児などの荷物の多い部屋では廊下と教室を繋ぐ収納があります。園児一人ずつに設けられた収納は子どもを預けた後、親御さんが廊下からオムツや着替えなどを入れられるようになっています。担任の先生は部屋側からその都度必要な荷物を取り出せる仕組みとなっています。つまり、教室と廊下、両側から使える収納です。このアイディアには圧巻でした。

 

そのほかにも建築的特徴はあります。どの教室にも広いデッキが敷かれたベランダが配置されており、様々な用途に活用できます。例えば、雨天の日の遊び場になったり、水遊びの場となったり。そのために温水シャワーも備えられています。また広い屋上広場は子ども達にとって格好の遊び場です。夏場は主にプールのために利用され、小さい園児さんにとっては格好の遊び場となり屋外運動場のように利用されています。このように半屋外的な要素を担うことができる場所が教室を中心にいくつか存在するのも特徴の一つです。

 

これら様々な工夫の陰に、現場の声があることを伺いました。計画・設計段階から現場の先生方の意見が反映されているとのことです。通常、公共の建築では建築担当者とその施設の担当者、そして我々設計者の間で計画が進められることが多いです。しかし、海南市立みらい子ども園では第一線でご活躍されている先生からの意見を旨く取り入れることが初期段階から可能であったとのことです。よって、より細かい気配りの行き届いた施設になっているのだと思いました。そう思って館内を巡ると発見があります。開放的な玄関は職員室に隣接しており、何かあれば直ぐに先生に声をかけられるようになっています。また、同じく玄関に隣接した明るく清潔な調理室をガラス越しに見ることができ、子ども達も調理する職員さんの姿を見ることができます。このような配置計画にも先生方の気配りがあるのでは無いかと察します。

 

少子高齢化の昨今、子どもの未来を考えることはこれまでに無いほど大切な事です。この貴重な時期(0歳〜6歳)にどのような原体験をするか。それは自ずと家庭だけでなく、このようなこども園や保育園・幼稚園での経験も大きいと思います。よって、今回の取材で笑顔あふれる園児と先生を見ることができて心が晴れやかになりました。そして同時に、当然の如く建築空間が担う要素も大変大きいと痛感しました。都市的スケールでの配置計画から子ども目線でのディティールの数々、そしてこれらの陰に先生方の意見が反映されているという点を思うと実直で素晴らしい建築であると分かりました。いつまでも子ども達の元気な声が町の賑わいにあることを願います。

【会報誌きのくにR1年11月号掲載】

情報・出版委員 東端秀典

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