和歌山県立近代美術館

和歌山県立近代美術館

建物概要

設計監理  ㈱黒川紀章建築都市設計事務所

構造    RC造 地上2階地下1階建

建築面積  7,087.17㎡(美術館部分4,500.62㎡ 博物館部分2,586.55㎡)

延床面積  18,704.50㎡(美術館部分11,837.90㎡ 博物館部分6,866.60㎡)

仕上(外装) 外壁 磁器質タイル、アルミパネルアルマイト仕上、アルミカーテンウォール

      屋上 アスファルト防水の上コンクリート押え

      庇  フッ素ステンレス鋼板、アルミパネルアルマイト仕上

 

和歌山城の南西、徳川吉宗像の前のゆるやかな階段を上がって行くと、ひときわ金属の庇が印象的な建物が見えてきます。黒川紀章氏設計の和歌山県立近代美術館・和歌山県立博物館です。沿革を追うと1963年旧和歌山城二の丸跡に「和歌山県立美術館」が開館。1970年には和歌山県民文化会館内に「和歌山県立近代美術館」として開館し、その後1994年現在の場所に新築されました。

取材に際し、まずは初めて訪れる応接間に驚きました。応接間の中にも外部と同じ庇が突出しています。お話を色々伺って、いただいた資料を読むと、黒川氏に通底した設計コンセプト「共生」の思想はこの建物にも生かされてる事に気づきます。和歌山城に敬意を払って、庇は和歌山城の屋根の反りと同じ形状に。アプローチ階段に沿った給排気塔は灯篭として表現。手摺の不規則な曲線は紀の川・熊野川をイメージしたもの等々。「歴史との共生」という考え方が見事に建物の造形として表現されているような気がします。またエントランス手前の大きな庇の下は、内部でも外部でもない縁側のような空間と位置づけられ、日本特有の「曖昧さ」を表現しているとの事です。一通りお話を聞かせてもらってから普段見ることのない荷解室や書庫などのバックヤードも見せていただくことができました。歩いてみると来館者の動線と、職員の動線が明快に分離しているのが良く分かります。最後に喫茶レストランを訪れると、テラス席からの和歌山城は素晴らしい眺望です。

またコレクションとしては郷土作家や近・現代版画作家の作品を中心に、明治時代から現代における日本画、油彩画、彫刻、版画など一万点を超え、展示替えしながらコレクション展や企画展で紹介されるそうです。そしてこの記事を書きながら学芸員の方がおっしゃった言葉が思い出されます。「美術品の研究は美術史学、美学、材料学など色々ですが、研究の最大の成果が展覧会です」。この言葉に一つ一つの展覧会に賭ける情熱を感じたような気がします。

【会報誌きのくにH26年8月号掲載】

 

情報・出版委員会 南方一晃

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