『湯浅えき蔵』  -YUASA EKIKURA-

『湯浅えき蔵』  -YUASA EKIKURA-

 

DSC_1888建 築 主  和歌山県湯浅町

設計監理者  ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社

施 工 者  株式会社 中井組

敷地面積    3,341.67㎡

延床面積   2,938.34㎡

 

 

 今回は湯浅町に出来た『湯浅えき蔵 -YUASA EKIKURA-』をご紹介します。

 湯浅町が平成27年度から湯浅駅周辺等整備基本方針に基づき、湯浅駅周辺における複合施設の整備を進める事となりました。

 『湯浅えき蔵』はその計画の下、JR旧湯浅駅舎北側の町有地に2018年(平成30年)11月着工され2020年(令和2年)3月に完成、10月に全面オープンとなりました。建物はRC造コンクリート打ち放しの3階建で、化粧型枠を使用し現れた木目に塗装を施して醤油蔵をイメージした様相となっています。

 建物の1階には湯浅町商工会と観光交流センター、JR湯浅駅の改札口が入っており、まちの玄関口としての役割を担っています。湯浅駅は旧湯浅駅のホームを利用する形で改札口のみ移動し、建物の完成に先駆けて2019年12月から新改札口の運用が始まりました。改札口移転に際してホームと電車の段差を無くし、またホームには新しく屋根やエレベーター等も設置され、利用者に便利な駅に生まれ変わりました。観光交流センターでは来訪者への観光案内やレンタサイクルの貸し出しの他に、町民への住民票や印鑑登録証明書等の証明書発行業務も行われ、役所の出張所としての役割も果たしています。またタクシー乗り場や自家用車での送迎スペース、車椅子専用駐車場等も雨に濡れずに利用出来る造りになっている為、町民にも大好評であるとお聞きしました。

 2階は町立図書館と民間経営のCafe589さんです。屋外エスカレーターを利用して2階へ向かいエントランスに入るとすぐ図書館で、左手の本棚には様々な専門書が揃えられています。またこの本棚には専門書の他にも面白い本が展示されているのですが‥どこが面白いのかは皆さんが実際に探してみてくださいね。“最初の一滴”醤油醸造の地に出来た図書館には醤油樽を模した書架スペースが設けられ、その大きな醤油樽はエントランスから図書館内への目線を遮る役割も担っています。また館内には学習コーナーが設けられ、学校帰りの学生さんがそこで自習する姿も見られます。郷土資料・専門書・一般書籍の他にも児童書・絵本や雑誌・漫画といった書籍も揃えられ、様々な目的を持った幅広い年代の人達が利用出来る図書館ですが、開館に際し急遽導入されたものが“図書除菌機”との事。機械に本を開いてセットし、ボタンを押すと本に付着した菌と埃を除去してくれるそうで、コロナ対策にも配慮されています。

 3階には地域交流センターと会議室が設けられています。町民の地域活動や交流、イベント等の催しにも利用される多目的のスペースですが、災害時には地域住民の避難所としても活用されます。また『湯浅えき蔵』は地域の津波避難ビルとしての役割を持ち、大規模地震が発生した際には住民が素早く避難出来るよう屋上階(屋上避難広場)へつながる全ての出入口の鍵が自動的に開錠されるシステムが採り入れられています。

 現在『湯浅えき蔵』の周辺では駐車場や駐輪場、公園の整備が進められ、駅としての役目を終えた旧湯浅駅駅舎(昭和2年築)もそのままの姿を遺して活用される事が決まっているそうです。町の中心に建つ『湯浅えき蔵』がまちの玄関口として来街者を出迎え、今後ますます観光交流や日常生活の中心的存在となって行くでしょう。

 

 【会報誌きのくにR3年3月号掲載】

情報・出版委員  西 祐代

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