「海鼠壁の武家屋敷・旧和歌山藩士大村弥兵衛長屋門」講演会報告

「海鼠壁の武家屋敷・旧和歌山藩士大村弥兵衛長屋門」講演会報告

 

日時/7月5日(日)13:30~15:40

場所/和歌山県立近代美術館(和歌山市)

参加/会員・一般参加者を含め約80人

第1部 「武家屋敷門長屋旧大村弥兵衛屋敷」の上映

  歴史的建造物映像化の会 代表 中西重裕(本会副会長)

第2部 なまこ壁の武家屋敷・旧和歌山藩士大村弥兵衛長屋門

文化財建造物保存修理技術者 鳴海祥博

 

旧大村家住宅長屋門は、県庁の北、有田屋町にあった大村家住宅を明治期に堀止東に移築し利用されていたもので、紀州徳川時代の貴重な武家屋敷の遺構です。移築により戦災を免れましたが、江戸期のオリジナルではなくなったことから文化財としては低く評価されてき

ました。解体が決まったことから、歴史的建造物映像会のから所有者に記録保存を要望し、所有者の承諾を得て記録が行われましたが、この記録活動の報道をきっかけに県の支援を得て、一転、保存されることとなったものです。建築士会では支部活動や会員個人の活動として、これまでいくつかの建物の解体に先立ち、見学会や記録保存を行ってきましたが、今回は建築士の活動が保存に結びついた貴重な事例となりました。

このような経過から、本講演会では、保存のきっかけとなった歴史的建造物映像化の会による「武家屋敷門長屋 旧大村弥兵衛屋敷」の上映と、移築プロジェクトの技術監修をされている元和歌山県文化財センターの鳴海祥博さんにご講演いただき、解体調査で明

らかになったこの建物の歩んできた経過、文化財や地域資源としての価値について解説をいただくとともに、鳴海さんがいままでに手がけてこられた経験から文化財

保存がなぜ必要なのかとについてご講演をいただきました。また、会場には図面や海鼠壁に使う平瓦、屋根瓦、また、和歌山市支部事業委員会で調査を実施、保存活動を行っている貴志邸の資料を会場に展示しました。

 

 講演では、この門長屋の来歴、門長屋という建築物の機能、和歌山城周辺のまちなみ(戦前このような長屋門が立ち並ぶ武家屋敷町が形成されていた)、海鼠壁の機能と歴史について説明がありました。門長屋は武家の格を表す門の機能と武家に求められる戦時の兵力となる家臣の住居の機能を兼ねたもので、石高により門の構成も変わることが紹介されました。また、海鼠壁については明暦の大火以降、幕府が進めた延焼防止のための防火構造で、全国的にも残っていることが貴重な状況であることが報告されています。

今回の講演会では

 1)文化財指定されていないが、歴史的価値のある建造物はたくさん存在する

 2)歴史的建造物が残るためには建築士等地域の人が声をあげる

 3)見つかった歴史的建造物を保存していくためのしくみづくり

といったことが必要ではないかとするまとめを行い、閉会しました。

 

                    和歌山市支部 明石和也

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