和歌山大学観光学部校舎

-和歌山大学観光学部校舎- 

所在地:和歌山市栄谷

設計:(基本計画)和歌山大学 本多友常

(実施設計)株式会社 安井建築設計事務所

施工:株式会社 淺川組

竣工:2011年5月

構造・規模:木造2階建 一部RC造、延床面積1792㎡

 

2008年4月、国立大学初の観光学部として発足した和歌山大学観光学部。システム工学部の本多教授(2013年ご退官)の基本計画のもと、紀州材を使用して建てられたユニークな木造校舎は、約15年が経過した今も大学のキャンパス内でひと際目を引く存在です。アプローチとなる広場から細長い斜面地に沿って計画された校舎は、その距離を活かした設計で、大規模木造の防火壁で隔てられた3つの棟で構成されています。手前に本館棟、奥に観光ドーム・スタジオ棟、その間に研究棟という配置で、渡り廊下が3棟を繋いでいます。

 

ファサードとなる本館棟のエントランスは敷地段差を利用した開放的な2層吹抜空間で、エントランスに併設された多目的スペースは学生たちが自由に過ごせる憩いの場となっています。その上下フロアーを階段教室(144名収容可能)が繋ぐダイナミックな空間構成は、この校舎の顔となっています。

研究棟は中廊下式で各教員の研究室や会議室が両側に並び、廊下の突き当りはサポートオフィスとミーテングスペースになっています。テラスへと繋がるこの空間は眺望も抜群で、居心地の良いカフェのようでした。一息つける場所、リラックスしたミーティング空間として活用されている風景が目に浮かびます。取材の日は見学できなかったのですが観光ドーム・スタジオ棟は、プラネタリムや360度映像で映像体験のできるドームシアターや、音響設備を備えたスタジオとなってます。

 

この校舎は学生達にも好評だそうで、音や温熱環境の課題も一部あるようですがそれ以上に、「学部への帰属意識の向上にも寄与している」と、この校舎のもつ魅力について学部長の大浦教授はお話しくださいました。残念ながら1期生の卒業には間に合いませんでしたが、2期生以降は、この校舎で卒業セレモニーを行っています。温かみのある木の空間の雰囲気は、学生の学びにも良い影響を与えているのではないかと感じました。

工期は短かったそうですが、材料の紀州材(杉)は内外装材、構造材にふんだんに使用されており、大断面集成材は県内加工できないため県外で加工が行われました。

「紀州らしさ」は新校舎建設の際のひとつのキーワードだったそうです。発注当時学長には世界遺産熊野本宮館(本誌公共建築100号R6.4掲載)のような建築イメージがあったとお聞きして、取材の帰りに改めて外観を眺めました。ファサードの軒庇を支える列柱が竣工当時は白木だった(改修で外壁と同じ黒になった)ことを思うと、神の象徴としての柱の文化、神殿などが思い出され、そのイメージが重なり「神聖な学び舎」の姿を表現しているように感じられました。

会報誌きのくにR8年2月号掲載】

情報・出版委員/笠木和子

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