秋葉山公園水泳場

秋葉山公園水泳場

■  平成25年 竣工

■  構造 RC造(下部)、S造(屋根は鉄と木のハイブリットトラス構造)

■  延床面積 25206㎡

■  設計 プロポーザル   昭和設計・フジ設計 共同企業体

     実施設計(建築) 梓設計・バウ建築企画設計事務所 共同企業体

 

和歌山市に世界に向けて発信できる水泳場が完成しました。県民のみなさんなら馴染み深い秋葉山公園水泳場です。元は、先の国体(昭和46年)に先駆けて作られた屋外プールで同じ敷地に立地していました。思い出深いみなさんも多いかと思います。約3年の工事期間を経て無事に竣工しました。

 

“森の中のプール”。このコンセプトを十分に満たした建物です。建物全体の高さを抑えることで山の稜線の連続性を保持し、同時に室内から感じることのできる緑がまるで森の中で散歩をしているかのような雰囲気に誘ってくれます。建物の内外には県産材である杉がふんだんに使用され木のぬくもりも感じることができます。ファサードではルーバーとして機能し建物全体のプロポーションを整え、また屋根を支える梁部分では鉄骨材と共に構造材として機能しています。

 

競技場のメインとなる50mレーンが10コース伸びる会場では三方を囲う山々の雄大な緑、屋根を支えるトラス部分のたくさんの木々もあり、自然の要素が取り入れられた大変気持ちのいい室内競技空間となっています。観客席との隔たりがなく、観客と選手が一体となって競技に挑むことができる点も非常にすばらしいです。屋外には子供達が楽しむことができる仕掛けのある遊泳プールが2つ、幼児プールが1つあります。この夏は多くの親子で賑わったと聞きます。

 

また、環境に配慮することが命題とされる昨今の建築業界ですがこのプールでは積極的に省エネに配慮された仕掛けがあります。太陽光はもちろんのこと、逆洗の際の水の再利用等々。中でも感服したのがプールの床が浮上する昇降システムです。利用しない夜間は床を上げ蓋代わりに利用することで水温の保持をし、熱源エネルギー消費を抑えることができます。

 

これらのように国際公認コースを備え、様々な用途に応え、かつ最新の技術を駆使し、総合的にデザインされた屋内水泳競技場は国内でも少ないと思われます。長く親しまれた秋葉山プールではありましたが、新しい施設を体験し、また、この夏の賑わいを見れば新築工事がいかに重要であったのかを知ります。丘陵地帯のプール建設ということで工事は難航を極めたと思われますが、このようなすばらしい競技空間を世界に発信できる施設がある点、これは県民の誇りです。先代のプール同様、国体での利用はもちろん、広く一般市民に愛され続ける施設であると思います。

【会報誌きのくにH26年10月号掲載】

 情報・出版委員 東端秀典

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