有田川町立 田殿小学校

有田川町立 田殿小学校

ベランダ【建物概要】

■構造・規模 校舎棟:鉄筋コンクリート造一部鉄骨造 地下1階・地上3階建て

       地学連携施設:鉄骨造 平屋建て

■建築面積 1,451.11㎡(校舎棟)、264.00㎡(地学連携施設)

■延床面積 3,588.43㎡(校舎棟)、200.00㎡(地学連携施設)

■設計監理 株式会社 川建築事務所

■施工 校舎棟:大成建設 株式会社

    地学連携施設:三洋建設 株式会社

 

 今回は有田川町にある『田殿小学校』を紹介します。敷地は有田川の北側斜面にあり、有田川流域を見渡すことのできる、とても眺望の良い敷地に建っています。全校児童約130人の小学校です。旧校舎は、地域住民が自らの資金を出し合って建設したとの事です。

 旧校舎・グラウンドを残したまま新築し、新校舎が完成後に旧校舎を解体しています。限られたスペース内に建設された校舎は、とてもコンパクトに納められています。

南側外観 建物外部はコンクリート打ち放し仕上で、南側の大きなベランダや、ガラス面が多いことが特徴的です。正門を入ると、ガラス張りのエントランスと職員室が見えてきます。職員室をガラス張りとすることで、登下校時の児童の様子を見守ることができ、地域の人たちにも、開かれた職員室となっています。

 エントランスに入ると、学年別にカラーリングされた下足箱が並んでいます。1階は低学年教室が配置されています。教室と多目的スペースは、ガラスの引き戸で仕切られていて、一体的に利用する事ができます。トイレは円形になっていて、内部には色鮮やかなモザイクタイルが使われています。児童に楽しくトイレを使ってもらうための工夫です。2・3階には1階同様に、多目的スペースを持った普通教室が配置されています。南側の大きなウッドデッキのベランダに出ると、建物が高台にあることもあり、有田川流域の素晴らしい風景を見ることができます。特別教室についても、廊下に対してガラス張りの教室となっています。

 3階の図書室はオープンな空間となっていて、間仕切りが無く、自由に利用することができます。一部床に掘り込まれた読書スペースは、児童たちのお気に入りのスペースです。各階を通して、ガラス張りで明るく・解放感があるのと同時に、ベランダや吹抜け、中庭などがあることで、各階でそれぞれ異なる風景を持つ、立体的に複雑な空間となっています。ガラス窓からは、別の階も見通せるため、教師も児童の様子を把握することができ、児童同士も学年を超えたコミュニケーションがとりやすくなっています。

地下階 敷地には高低差があるため、グランドへは地下階を通り抜けてアプローチするようになっています。建物中央の中庭上部からの光が降り注ぐ、独特な空間となっています。このような吹き抜けやガラスが多く使用されていることで、限られたスペースでコンパクトに建設されているにも関わらず、閉塞感の無い、明るく伸びやかな建物になっています。

地域に校舎の内部を開いていくことで、児童の様子が外部にあふれ出し、地域・子ども達と学校を強く結びつけています。かつて地域住民が自ら建設して大切にしてきた学校のように、この学校も長く大切に愛されていくと感じました。

【会報誌きのくにR1年5月号掲載】

情報・出版委員 佐原光治

 

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