旧和歌山県会議事堂

ー旧和歌山県会議事堂ー

■ 所在地  岩出市根来2347番

■ 概 要 ・明治31年(1898)に建設された和歌山県会の議事堂建築

      ・木造2階建一部平屋、瓦葺屋根、間口31m、奥行47m、建築面積1239㎡

 ※平成29年5月、旧和歌山県会議事堂は県内で82件目(国宝含む)の重要文化財に指定されることが決定した。

 旧和歌山県会議事堂は、和歌山城の一の橋に程近い和歌山市一番丁(現在の和歌山中央郵便局)に、明治31年(1898)に建設された。当時県庁は和歌山城北西の西汀丁にあり、県庁と県会は離れた位置で不便ではあったが、規模の大きな議事堂は「壮麗ナル市内有数ノ建物」とされ、単に県会のみならず、県民の公会堂としても用いられた。明治44年(1911)には、夏目漱石が講演に訪れてもいる。

 しかし昭和13年(1938)に議場を備えた現県庁舎が完成すると、県会議事堂は議事堂としての役割を終え転機が訪れた。そして議事堂は売却され2度の移築を経て、根来寺「一乗閣」となっていた。しかし議事堂の保存活用を求める県民の声が高まる中、和歌山県は再び旧議事堂を取得し、平成24~27年度に移築修復工事を行い、建築当時の姿に復原されたものである。

 旧和歌山県会議事堂は正面から本館部、議場部、背面に控室部となり、全体にエ型の構成となる。本館部は議員が使うエリア、議場部は吹き抜けの大空間の議場、控室部が使用したエリアとなる。

当時の県庁舎は洋風建築であったが、議事堂はなぜか和風意匠で建てられた。花崗岩の礎石上に角柱を建て、土壁漆喰塗に下見板張とする。屋根は瓦葺である。伝統的な社寺建築のディテールを各所に用いつつも、総体に簡明な和風意匠で統一されている。一方で小屋組は、本館部や議場部でトラス組を用いて大空間を実現しており、和魂洋才のごとく、西洋の建築技術が大胆に取り入れられている。

明治時代の議事堂建築では、新潟県と和歌山県のみが現存しているが、このうち旧和歌山県会議事堂は、明治期の県会議事堂で和風意匠を基調とした現存唯一の遺構で、和歌山県の文化遺産として貴重なものである。

参考 わかやま県政ニュース「旧和歌山県会議事堂の重要文化財(建造物)指定に係る資料」

【会報紙きのくにH29年 6月号掲載】

情報・出版委員会 森下若生

このページの上部へ