かなや明恵峡温泉

 [かなや明恵峡温泉]

●所在 有田郡有田川町修理川地内

●建築概要 交流棟 木造1階建て 延べ床面積700㎡

      温泉棟 鉄骨造一部RC造 地下1階地上1階建て 延べ床面積770㎡

 

今回は有田川町にある「かなや明恵峡温泉」を紹介します。阪和自動車道有田I.Cを降りて、国道424号線を東に進めると、右手の小高い山の上に重々しくて真剣な雰囲気の黒い建物が見えてきます。写真のように、楕円形の建物なので“風呂桶”というのが最初のインプレッションですが、設計された方に聞くと、「国道424号線からの眺めが“山の上に建つ城”をイメージして設計した。」とのことで、確かに、突き出た2つの寄棟の屋根が櫓のように見えて、また、まわりの風景との馴染み具合が正に“山の上に建つ城”と言った感じの素晴らしい建物です。平成14年10月1日にOPENし、今でも年間11万人が訪れるという人気のある施設です。泉質はアルカリ性のやわらかなお湯で肌がスベスベになります。

建物は、大きく見ると交流棟と温泉棟に分かれており、渡り廊下で繋がれています。まず、交流棟は平面的に見ると楕円の形をしており食堂、休憩スペース、売店コーナーその他事務室、トイレ等があります。大断面の集成材(和歌山県産材使用)で組まれた柱、桁、梁、頬杖がアラワシになっており、思わず見上げてしまうほど天井が高いので、食事や休憩がゆったりできる空間です。また、後で述べる温泉棟にあるものも含めて休憩スペースがとても広いのは、湯上りの利用者にとっては非常に嬉しいところだと思います。次に、温泉棟には露天風呂と内風呂がセットでそれぞれ2.ヶ所あり、定期的に男湯と女湯が入れ替わります。露天風呂の湯船からは、周辺の山々の長閑な景色が一望できるので、自然との一体感を楽しめます。

かなや狭温泉図面

次に、この施設の心臓部である温泉設備を見学しました。源泉は、地下600mから湧き出ており、地下250mに設置されたポンプでポンプアップしています。湧出量210l/min、温度20℃でこの冷鉱泉を加温、殺菌消毒して使用しています。加温はチラーで行っています。オープン当時25~26℃あった温度がこの数年で、20℃まで下がったそうで、その分、当初の加温設備の能力では不足になり、新たな設備を追加されたとのことです。殺菌消毒は、塩素系薬剤によるものと紫外線によるものの2つの方法で行っています。国内の温泉においてもレジオネラ菌の感染による事故も発生しており、非常に恐ろしいことで、殺菌消毒は重要ですが、薬剤を入れすぎるとカルキ臭くなり源泉本来の良さが損なわれるという反面もあります。薬剤の添加量については、毎日検査を行いデリケートに管理されているとのことです。これらの加温設備や消毒殺菌設備の他にも循環ろ過設備等の大掛かりな設備が配備されています。温泉棟の地下にある機械室に入らせていただきましたが、それぞれの設備をつなぐ配管はまるで蔦が絡み合っているようで、その量と複雑さに驚かされると共に、この設備の管理メンテを行っておられるスタッフの方々の苦労は相当なものだと思いました。

最後に、夜の露天風呂は、星がとてもきれいだとお聞きしました。次回、日が落ちるのが早い冬場をねらってもう一度訪れたいと思います。

【会報誌きのくにH29年7月号掲載】

情報・出版委員 大江 猛史

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